【小学生の反抗期】反抗期に親が知っておきたいアドラーの勇気づけ

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小学生に上がって2ヶ月ほどがすぎた頃、子供が急に言うことを聞かなくなりました。素直だった頃が嘘のように口答えをし、屁理屈を言い、癇癪を起こします。泣き叫んだり物に当たったり、まるで別人のような振る舞いに、親の私もつい感情的になり、強く叱ってしまう。そしてお互いに疲弊して、収拾がつかなくなる——。

そんな日々が続き、どうしたらいいのかわからなくなっていたある日。実家に帰省したときにも子どもが大きく癇癪を起こし、私も我慢できず親の前でポロポロと涙をこぼれしてしまいました。そんな私に、母が言いました。「これは、反抗期に入ったんだね」

“反抗期”!!!——その言葉を聞いた瞬間、胸がすっと軽くなった気がしました。そうか、これは成長の一過程なのか。育て方のせいじゃないのかも。調べてみると、小学校低学年には「中間反抗期」というものがあるそうです。集団生活に入って環境がガラリと変わり、比較や競争、我慢を覚えるこの時期、家庭がそのストレスのはけ口になることがあると知りました。

とはいえ、対応法がわからない!!ネットを検索すれば「怒らない」「押しつけない」「聞く姿勢を」など、もっともなことが並んでいます。でも、初めからそうしたいのにできていない自分に、ますます自信をなくしてしまう。。

そんなときに出会ったのが、アドラー心理学の「勇気づけ」でした。勇気づけを少しずつ実践していくと、大袈裟ではなく、実践したその日から子どもの態度が良い方向へと変わっていきました。

子どもの言動に振り回されて、つい感情的になってしまう時でも、「勇気づけ」を知っているだけで、立ち止まって考えるきっかけになります。悩んだときに何度でも読み返して、ヒントをもらえる考え方です。


「勇気づけ」とは何か?

私が読んだのは、「アドラー心理学を語る4 勇気づけの方法」。この本では、子どもを「困難に立ち向かえる力を育てるため」に親ができることが語られています。

アドラーは、「健康に生きること=勇気を持って目的に向かって生きること」だと考えます。ここでいう“勇気”とは、元気や正気、そして建設的に人生を切り開く力のこと。人間の行動は過去の原因ではなく、“未来の目標”に向かって選びとっていくもの、つまり、どんな行動にも目的がある。その目的が建設的で社会的なものであるよう、親は子どもを「勇気づける」必要があるのです。
建設的な社会的な目標追求とは、地味でコツコツとした道のりで、たくさんの勇気がいります。人生には、コツコツと地味に積み重ねなければならない時期もたくさんあります。そのときに必要なのが「勇気」です。私たちは、自分の未来に向けて目標を設定し、その達成のために進んでいく存在です。アドラー心理学では、過去の原因や本能に左右されるのではなく、「今ここから未来をどう築くか」が大切にされます。

子どもが、社会にとって価値ある生き方を選択し、目標を設定することができるように。
そして、自分の力で、自分で決断をしながら、目標に向かって進んでいく力を持てるようになるために。

子どもが破壊的な手段や近道で目的を達成しようとするのではなく、社会にとって価値のある、建設的な方法で進んでいけるように、親子は“対等なパートナー”として“勇気づける”関わりが必要なのです。


勇気づけのコミュニケーションとは

「偉いね」よりも「ありがとう」「うれしい」

子どもを勇気づけたいとき、つい「偉いね」と言ってしまうことはありませんか?
でも、「偉いね」という言葉には上下関係が含まれています。褒める人と褒められる人。これは、対等な人間関係ではありません。

それよりも、「○○してくれて嬉しかったよ」「ありがとう、助かったよ」と、自分の感情を素直に伝えることが大切です。
親子であっても、パートナーであっても、「自分はどう感じたか」を伝えることが、相手の存在をまっすぐに肯定する勇気づけになります。

普通の日常こそ、勇気づけのチャンス

勇気づけの言葉は、特別なときだけに必要なわけではありません。
むしろ、何気ない日常の中にこそ、たくさんのチャンスがあります。

「朝、時間通りに起きられてえらいな」ではなく、
「起きてきてくれて助かったよ、ありがとう」

「元気に学校に行けて偉いね」ではなく、
「行ってらっしゃい。今日も元気に送り出せて嬉しいよ」

このように、“当たり前”に見える行動を見逃さずに声をかけていくことが、子どもにとっては大きな励みになります。
「悪いことをしたときばかり声をかけられる」のではなく、「普通でいることに価値がある」と実感できることが、穏やかな自己肯定感を育てるのです。

悪い行動には反応しすぎない

子どもが悪いことをしたとき、叱ったり怒ったりと、つい強く反応してしまうことがあります。
でも実は、それが“逆の勇気づけ”になってしまうこともあります。

なぜなら、子どもは「良いことで注目されなくても、悪いことで関心を引ける」と学んでしまうからです。

アドラー心理学では、「悪いことに対しては最小限の反応を」「良いことに対しては丁寧な反応を」とされています。
つまり、破壊的な行動には過度に反応せず、普通の行動にこそ光を当てる。この逆転の発想が、子どもの内面に勇気を灯すのです。

言葉づかいが乱暴なときは、「そんな言い方はダメでしょ」と言うよりも、親自身がより丁寧な言葉を使ってモデルを示す。
雑草は抜くよりも、花をたくさん育てた方が、自然に目立たなくなる。そんなイメージです。

成績よりもプロセスを見つめる

テストの結果を持ち帰ったとき、点数そのものではなく、そこに至るまでの努力やプロセスに注目して声をかけてみてください。

「頑張って勉強してたの、ちゃんと見てたよ」
「一生懸命やったのに残念だったね。でも、そこまで努力できたことがすごい」

このような声がけは、点数に一喜一憂するのではなく、「頑張ることそのものが価値がある」という感覚を育てます。

成長を喜ぶ言葉も効果的です。

「前よりずっと字が丁寧になったね」
「あなたは気が小さいんじゃなくて、慎重な性格なんだと思うよ。自分のペースで進んでいこうね」

子どもの特性を受け入れ、安心して自分らしく進めるよう支えることも、勇気づけのひとつです。

指摘するなら「私メッセージ」で

どうしても気になることを伝えるときは、「あなたのやり方は間違っている」とは言わずに、「私はこう感じる」と伝えるだけでも、受け取られ方が変わります。

「私は、そのやり方はちょっと苦手だな」
「これはあくまで私の意見なんだけどね」

このように、自分の立場からの感想として伝えることで、対話の扉が閉じられるのを防ぎます。

自分自身を勇気づける

最後に、子どもを勇気づけるためには、まず大人自身が「自分を勇気づけられる人」であることが大切です。

自分の努力を認め、自分を責めすぎないこと。
心が折れそうなときにも、「私は私のやり方でいい」と、自分に声をかけてあげられること。

そうやって自立した大人が、子どもに寄り添うことで、真に協力的な人間関係が築かれていくのです。す。「私の意見にすぎないけれど、これはこう思うよ」「そのやり方は、私は少し苦手かな」と伝えれば、対等な関係で話し合えます。

親自身も、「怒ってばかりで自己嫌悪」「いい親になれていない」と感じるとき、自分を責めるのではなく、頑張っている自分を認める。「今日もよくやってるよ」と、自分に声をかけてあげることも重要だと思います。



相手へ主張するときの勇気づけ

親子に限らず、夫婦、友人、職場、どんな人間関係でも「自分の意見や希望を伝える場面」は避けて通れません。そのときに大切なのが、「相手が傷つかないように配慮しながら」「自分の気持ちや要求をきちんと伝える」ということです。

アドラー心理学では、人と人とは対等な関係であると考えます。命令するのではなく、協力をお願いし、その貢献に感謝する。そんな姿勢が、健全な関係をつくっていく土台になります。

たとえば、子どもに片づけてほしい場面があったとします。

「早く片づけなさい!」ではなく、
「あとでまた気持ちよく遊べるように、一緒に片づけようか」と伝える。

これは、命令ではなく協力のお願いです。自分の希望を押しつけるのではなく、相手の立場にも目を向けることで、関係がこじれにくくなります。

また、自分の主張を「絶対的な正しさ」として言い切るのではなく、「私はこう思っている」と伝えることも大切です。

「なんでそんなことするの?」ではなく、
「私はそのやり方はちょっと苦手かも」と伝える。

さらに、要求がすべて通らないこともあります。そんなときは、無理に押し通そうとせず、妥協点を探したり、少し時間を置いたりして工夫します。感情的になりそうなときは、いったんその場を離れて落ち着く時間を持つのも有効です。

このような「主張的コミュニケーション」は、勝ち負けの関係ではなく、協力のための手続き。感情に流されず、理性的に自分の思いを伝えることが、穏やかで成熟した人間関係をつくる力になります。

親として、つい感情が先走ってしまうこともあるけれど、自分の伝え方一つで、子どもとの関係はぐっと変わります。相手を尊重しながら自分を表現するというのは、大人になった今だからこそ学び直したい、コミュニケーションの基本かもしれません。


不適切な行動の目的を見極める

子どもの行動に戸惑うとき、私たちはつい「どうしてこんなことをするの?」と原因を探したくなります。でもアドラー心理学では、「人の行動にはすべて“目的”がある」と考えます。つまり、子どもが問題行動を起こすとき、それは何かしらの“目的”を果たそうとしているのです。

子どもが不適切な行動をとる理由

たとえば、小さな子が物を投げたり、泣き叫んだりするのは、それがいけないことだとまだ知らないからです。この段階では、ルールを教え、代わりに適切な行動を示してあげるだけで行動は変わります。

でも、小学生になると事情は少し複雑です。「いけないこと」とわかっていながらやってしまう場合、その裏には“別の目的”があります。

たとえば、「カンニングしてでもいい点を取りたい」という子は、「頑張っても報われない」と感じていて、自信や勇気を失っているのかもしれません。こんなときは「君ならできる!」と根拠のない励ましをするより、「どうしたら正しい方法で目標に近づけるか」を一緒に考え、少しずつ勇気を取り戻させることが大切です。

また、時には子どもの行動が「親の注意を引くため」「自分の力を試すため」「大人を困らせるため」などの意図を持っていることもあります。つまり、行動そのものよりも「その行動で、誰から何を得ようとしているのか」を見極める必要があるのです。

不適切な行動の5つの段階と対応

アドラー心理学では、不適切な行動は以下の5つの目的段階に分類できます。それぞれに適した対応が必要です。

  1. 賞賛を求めている(承認欲求)
     →「すごいね」と褒められることを目指して行動している状態です。勝ち負けや競争ではなく、「家族や社会にどう貢献できたか」という視点を育ててあげることが大切です。
  2. 注目を集めたい
     →良くない行動をしてでも注目されたいと感じている時期。ここでは、不適切な行動には反応せず、代わりに適切な行動に注目し、声をかけていくことがポイントです。
  3. 力を誇示したい(支配)
     →「自分の方が上だ」と親や先生に示したくて反抗するケースです。つい本気で怒ってしまいそうになりますが、ここで感情的に応じると逆効果。できるだけ冷静に、喧嘩を買わず、必要ならその場を離れましょう。
  4. 復讐しようとしている
     →「どうせ愛されていない」「親を困らせてやる」と感じて、わざと傷つけるような言動をするケース。相手(親や先生)はもはや適切に関われません。この段階では、信頼できる第三者のサポートが必要です。
  5. 無気力を装う(あきらめ)
     →「どうせ自分なんて」と自分を見捨てるような態度をとる状態。叱っても、励ましても届きません。この段階はとても繊細で、焦って関わることでさらに傷つけてしまう可能性も。専門家の助けを借りつつ、そっと見守ることが大切です。

子どもの行動が気になるときは、「なぜこんなことをするの?」ではなく、「この子は今、誰にどんな反応を求めているのだろう?」という視点を持ってみてください。相手役(親・先生など)の感情や反応を観察しながら、子どもの“目的”に気づくことがヒントになります。

日常の中の「適切な行動」に目を向ける

大きな声で叱ったくせに、子どもが静かに過ごしている時には何も声をかけていなかった…そんな経験、ありませんか?

実は、朝起きてくる、学校から帰る、家族でご飯を食べる、お風呂に入る──これらの「当たり前」の行動こそ、適切な行動です。そして、その行動にこそ、感謝やねぎらいの言葉をかけるべきなのです。

「自分で起きてくれて助かったよ、ありがとう」
「今日も元気に学校に行けて嬉しいよ」

そうした小さな声かけの積み重ねが、「普通でいることの勇気づけ」につながります。
問題行動に注目するよりも、日々の安定した営みに光を当てていく。子どもが「自分はちゃんと認められている」と感じられる環境づくりが、何よりの支えになるのです。


最後に

反抗期の子どもにどう向き合うか。答えが一つに定まることはありません。

けれど、アドラーの「勇気づけ」は、親の“あり方”に立ち返る視点を与えてくれます。叱るのでもなく、甘やかすのでもなく、子どもの未来に向かって、日々の関わりの中で勇気を育てる。

私もまだまだ道半ばです。でも、もし今、同じように悩んでいる親御さんがいたら、一度この本を手にとってみてください!!そして、どうか自分自身を勇気づけることから始めてみてください。

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